Travel Notes 12
おもちゃの兵隊のようなデンマーク王室の衛兵

 正式国名 デンマーク王国
 面積    九州の約1.2倍、ほかにフェロー諸島、グリーンランド
 人口     539万人
 首都    コペンハーゲン。人口50万人
 言語    デンマーク語
 通貨    デンマーククローネ 略号DKK

トラベラーズチェックの落とし穴

列車がコペンハーゲン駅に着いたのは定刻通り17時59分だった。

列車から降りると、僕は駅構内の両替所に向かった。
ここからはしばらくユーロは使えない、デンマークはEU加盟国であるが
通貨はデンマーククローネ。

手持ちのユーロも残り少ない、ここは成田で購入したトラベラーズチェック
を使ってみることにした。トラベラーズチェックを使うのは初めてだ。

カウンターで100ユーロのチェック一枚に漢字で自分の名前を書く。
トラベラーズチェックとは旅行小切手のことで、購入すると同時に上に
サインを記入する。
 そして実際使用するときにその下にもう一度サインをして、上下の
サインの一致を見て初めて通貨として機能する。
 紛失や盗難に遭った際に、本人しか使用することができず(サインが
あるから。)再発行も利く便利で安全な小切手だ。

 上下共に漢字でサインをしたチェックを一枚差し出した。
(外国人は漢字が真似できないのでクレジットカードやチェックのサイン
は漢字でするのが常識)


 カウンターの女性職員がパスポートの提示を求めてくる。
パスポートと僕の顔とチェックを何度も確認しながら首をひねる。
”やはり!” 実は一つ心配事があったのだ。

 機内で全てのチェックに一つ目のサインをした後、ガイドブックを
読んで、しまったと気付いたことがあった。

 どうも、チェックのサインはパスポートと同じものにしないと、後々
トラブルの元になると言う。
 僕のパスポートのサインは実はローマ字だ。
漢字で書いたチェックのサインと一致しない。

 係りの女性はさっきから僕のパスポートとチェックと顔を何度も
何度も確認している、しまいには他の上司らしき人にまで相談する
始末だ・・・。

 
 トラブルの元とはコレのことだったのか・・・。
チェックはあと4枚ある、これはこの先、めんどくさいことになるなぁ・・・。

僕は日本の自動車免許を取り出してほら、これと一緒でしょ?
と見せるが、筆記体の漢字の判別がデンマーク人に出来るわけがなく・・・。

 たった一枚のチェックを換金するのに5分もの時間を費やしたが
なんとか3箇所サインを入れることで換金してもらえた。
 
なんとか現地通貨を手に入れた僕は、さて、これからの予定を
考えねばならなかった。


まぼろしの夜行列車

コペンハーゲン中央駅

 時刻は午後6時半、さぁこれからどうしよう。
明日の夕方6時にはストックホルムの空港に日本からニッタ君が
到着する、ほっといても死なないだろうけど一応、彼女が到着
する前に空港に着いておかねばならない。


 駅構内の隅っこでザックの上に座り込んで考えてみた。
今日の8時間にも及ぶ、列車の旅でもうくたくた、正直もう鉄道は
ウンザリだった。
 ここからスウェーデンの首都ストックホルムまでは結構距離がある。

僕はトーマスクック時刻表を開いてみた、時刻表によるとストックホルムまで
スウェーデン国鉄の新幹線X2000で約6時間弱とある。
うぅ〜ん6時間かぁ〜6時間はキツイなぁ〜、だいち、明日の午後6時に
ストックホルムのアーランダ国際空港に着くことを考えれば、最低でも
明日の11時20分発のX2000に乗らなければならない。

 何か方法はないのか?

 そう思って時刻表を眺めていると、あった!!コレだ!!
時刻表の隅のほうに午後10時20分発の夜行列車を見つけた。

 これだ!!こいつなら宿の高い北欧で一泊浮かせられるし、ストック
ホルムに朝の6時に着くことができる、朝の6時に着けば1日有効に
使えるし、コペンハーゲンの町は小さいから出発までに主だった
見所はカバーできるだろう。

まさに完璧なプランに見えた。

 そうと決まると、さっそくチケット売り場に向かう。
カウンターの女性に言うと、う〜んわかったわ、4つとなりのおじさんが
座ってるカウンターに行ってみて、そう言われた。

 なにか問題があるのだろうか、少し不安になる。

言われた通りに4つとなりのおじさんのカウンターに行ってみた。
時刻表を見せ、コレに乗りたいんだとおじさんに告げる。

うぅ〜ん、ごめんよ、この夜行列車は来月からの運行なんだ。

おじさんは申し訳なさそうにそう言った。

なんだか身体中の力が抜けてガックリ来た・・・。
仕方ない、その夜行がダメとなると今夜はもうストックホルム行きの
列車は無い。

振り出しに戻った。

仕方ない、これから宿を探して、今夜はコペンハーゲンに一泊することにしよう・・・。

似たもの同士

アンデルセンが愛したニューハウン、かつては長い航海を終えた船乗り達が羽を伸ばす居酒屋街としてにぎわいを見せていた。今はレストラン街

ガイドブックによるとコペンハーゲンの安宿はどうやら駅のすぐ東側
に集中しているらしい。重いザックを背負って駅を出た。

駅の東側のさみしく怪しい通りだった。
SEXショップが建ち並び、麻薬常習者がたむろするなか歩くと
ちらほらとガイドブックに載ってるホテルを見つけることが出来た。

数件、まわって部屋を見てみるがどこも高すぎたり部屋の質と値段の
釣り合いが取れてなかったりでなかなか納得のいくものがない。
 全体的に宿代がとても高く感じられる、そう、ここは物価の高い北欧なのだ。

 重いザックを背負い雨の中を数件まわって一軒のホテルに入った。

ん、ここは一度見た覚えがあるぞ、あ、さっき入ったホテルだ。
レセプションのオバちゃんがやっぱり帰ってきたわね、そうでしょ
そうでしょ、うちがいいでしょ、そんな顔をしたのでバツが悪いのと
疲れていたことも手伝い、ここにすることにした。

 値段はバス、トイレ共同で一泊朝食付きで430DKK、約7500円って
ところだ、ガイドブックに載ってる格安ホテルの中で2番目に安いホテル
なので、まぁよしとしよう。

カギを受け取りエレベーターに乗る、エレベーターは普通のトイレの
ドアのような扉が一枚あるだけの簡素なエレベーターだ。

 カギをさしこみ部屋を開けると、そこはツインルームだった。
部屋の印象としてはお世辞にも新しいとはいえないが、掃除は
行き届いていた、若干タバコ臭いのが気になるが・・・でもここツインだ。

フロントに降りてオバちゃんにこの部屋ツインだよと言うと、いいのよ
あなただけだからベッド二つ使っちゃって、そう言ってくれた。

 ツインルームなら本来550DKKだからお得だ、サンキューおばちゃん。

外は雨、乾くかどうかわからないけど洗濯した。

外に出た、雨の中、アンデルセンが愛したニューハウンまで歩いた。

 途中、白人の若者バックパッカーのカップルに話しかけられた。
彼らは街行く人に何か尋ねていたようだが、SORRY、と断られていた
ようだ。
この街で非常にめずらしい東洋人の僕にまで、「Do You Speak English?」
と話しかけてきた、必死なのだろう。
彼らはさっきコペンハーゲンについて、雨の中宿探しに奔走してるようだ。
土地勘の全く無い、知らない国の知らない町で夜に宿を探さなければ
ならない不安はとてもわかる。ましてや、この雨だ。
早く、重いザックを降ろしたい、早くホッとしたい・・・。

そんな気持ちが同じ旅をしてるものとして痛いほど伝わってきた。
僕は肩に掛けていたウェストバッグから地球の歩き方を取り出すと
彼らも、なんだ、キミも仲間か!!そんなホッとした顔して笑った。

僕は、地図とホテルのリストを見せると自分が泊まってる周辺の
安宿街について教えてあげた、彼らにとって僕の存在はとても嬉しかった
らしく、特に彼女のほうは心細かったのだろう、泣きそうになっていた。

彼らに丁重に礼を言われるとなんだか嬉しかった。
僕らバックパッカーには駅前の高級ホテルに泊まるような金は無い。
むしろ意地でも泊まらない、それがポリシーだったりするのだ。

そんな同じ境遇の若者の(僕はもうそんなに若くないけど・・・)役に
立てた事はとても嬉しい、こういう旅は持ちつ持たれつ。

いずれ僕も誰かの親切に助けられることもあるだろうし
今までもあったはずだ。

軽く街を見て周ると雨でずぶ濡れになって、コンビニでピザを買って帰った、
ビールが飲みたかったけど北欧では夜間、アルコールは手に入らない。

宿の周りは麻薬常習者と娼婦で溢れていた。
娼婦の誘惑を振り切り部屋に戻るとテレビをつけた。
特に面白いテレビもやっていない、僕はピザを食べながらいつの間にか寝てしまっていた・・・。





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