Travel Notes 7

ベルギーと言えば?

 正式国名 ベルギー王国
 面積    九州の80%
 人口    1005万人
 首都    ブリュッセル。人口95万人
 言語    北部がオランダ語、南部がフランス語
 通貨    ユーロ

4時間の滞在国

パリから1時間半、僕の乗ったタリスは定刻どおりベルギーの首都
ブリュッセル南駅へと到着した。

 ブリュッセルはNATOの本部も置かれるヨーロッパのヘソだ。

 時刻は7時、まず今夜の宿を決めなければいけない。
3日後の夕方にストックホルムに入ることを考えるとあまり時間がない。
今日一日のパリは無駄だった、このロスは大きい。

 トーマスクック時刻表を見ると23時38分にパリ発ブリュッセル経由
ベルリン行きの夜行列車があるのを見つけた、ストックホルム入り
を考えると少しでも進んだほうがいい、幸いなことにブリュッセル
の町は小さい、4時間あれば何とか主だったところは見てまわれそうだ。


 そう決めるとザックを駅のコインロッカーに放り込みチケット売り場で
夜行列車の席を確保した。


 身軽になるとガイドブック片手にブリュッセルの中心部を目指すこと
した。
 主だった見所はどうやら中央駅の半径500メートル圏内に集中
しているようだ。
 タリスが着いたのはブリュッセル南駅、僕が持っている
『地球の歩き方 ヨーロッパ』には南駅の地図はおろか中央駅への
行き方も書いていない。

 さてどうやって中央駅に行けばいいのだろう?

 今考えると単純に南駅から電車で行けば良かったのだが、なぜか
そのときは中心部には地下鉄で行くものだと思い込んでいた。

 ガイドブックにも載っていないのでとりあえず、地下鉄の駅にもぐって
見る。どうやら地下鉄の駅には地下鉄とトラム(路面電車が地下を走る)
の2種類が走っているらしくどっちに乗っていいかわからない。
駅の路線図も複雑すぎて見ていてさっぱりわからない。
 ガイドブックの地図にも南駅自体が載っていないので中心部まで
どれだけ距離があるかも不明だ。
 わからないだらけなのだがとりあえず切符を買って、一番最初に
来たトラムに飛び乗ってみた。

 このトラム、郊外に出れば地上を走るみたいなのだが中心部では
地下を走って、地下に交差点なんかがあって結構おもしろい。
 こういう乗り物ははじめてだ。

 どこに向かってるかもわからないし、どこまで連れて行かれるかも
わからないのでとりあえず2、3駅過ぎたとこで降りてみた。
 地上に出てみるとどうやら少し行き過ぎたらしい。

でも、まぁいいや、歩いて戻れる距離だ。

本名はジュリアン君

さっぱり何をやってるのかわからなかった・・・。

 ベルギーと言えば、何を思い浮かべるだろうか。

ベルギーワッフル?チョコレート?フランダースの犬?
僕はアレだ、小便小僧、とりあえずコレ見とけ。

小便小僧を目指し歩いていると広場の噴水の前で人形を並べ
なにやら準備をしている女の子達がいた。
 これから何か劇を始めるらしい、シラフでは恥ずかしいのか
その中の一人がワインのボトルをラッパ飲みしだした、思わず
目が合ったので彼女はほほを赤らめて照れながら僕に微笑んで
くれた。

           か・・・かわいい!!

 一体何をはじめるのだろうと思って様子を見ていると一人の女の子が
サックスを演奏して残り二人が人形を使って劇を始めた。
 しばらく見ていたけど全然内容がわからないし何がしたいのか
よくわからない。
 人形もあまり可愛くないので子供は怖がってたぞ・・・。

しばらく見た後、小便小僧を目指した。

街の中心広場グランプラスを抜け200メートルほど歩くと、人だかりが
出来ている一角があり、そこにヤツは居た。。。

出してるぅ〜?




 ども!!ジュリアンです!!




 小さい小さいとは聞いていたがほんと小さいな・・・いや、背がですよ。
身長50センチくらいかなぁ、ど〜でもいいや。

 ベルギーでの目標を達成したので、さて飯でも食うか。

世界一美しい劇場

実際には王は住んだことがない王の家


銅像とはいえ、人が小便してるのを見た直後に飯を食うのもなんなので
ちょっとだけ観光してみる。

市庁舎などが集まる町の中心広場グランプラスに行って見る。
行く途中、女の子に写真を撮ってくれと頼まれ写真を撮ってあげる。
その後、彼女が話しかけてきたが、強烈になまっていて、おそらく
英語だと思うのだがまったく聞き取れない、理解できない。


外見から察するに東欧から来てる子だと思うのだが、まったく会話が
成り立たず、困る。
 彼女は何が言いたいのだろう?東洋人がめずらしいので話を
したいのか、僕がかっこいいから惚れたのかわからずじまいだ。


残念だがこれ以上話してもお互いらちが明かないと感じたらしく
握手をして別れる。


 う〜ん、なんだろうな〜、ヨーロッパで結構もてるのはうれしい
のだが、コミュニケーションが取れなくていつも不完全燃焼だ。
 やっぱり英語は必要だ、話せなくてもこうして旅はできるが
話せたらもっと旅が濃いものになるに違いない。


 去年も同じこと考えたが、成長せずにまた来てしまった。


街の中心グランプラスは縦110m、横70mあまりの石畳の広場、
11世紀〜12世紀には市場として栄え広場の周辺には市庁舎、
王の家、フラバン公の館など、ゴシック、バロック様式の建築物
が立ち並ぶ。
かつてフランスの詩人で小説家のジャン・コクトーが”世界一美しい劇場”
と広場を絶賛した。


まわりにはチョコレートの量り売りのお店なんかがあって楽しい。
チョコレートをお土産に買って帰ろうかと思ったが長旅で溶けるだろう
からやめた。


このグランプラスを抜けるとブリュッセルいちのレストラン街
ブーシェ通りはすぐそこだ。


怒りのムール貝

初めてのムール貝、味は・・・別にどうでもいい。

ベルギーと言えばビール王国。
そしてムール貝とフリッツ(フライドポテト)が有名だそうだ。

今夜のディナーはコレに決めだ。

意外なことに国民一人あたりのレストラン数はヨーロッパで最も多い。

グランプラスを抜けブリュッセルで最もレストランの集まるブーシェ通り
(肉屋小路)に行く。
通称グルメ横丁、ボったくりの店ありの玉石混淆だが楽しい通りだ。

一通り通ってみると客引きが結構すごい、その中で客がいっぱい
入ってて美味しそうなお店の席についた。

 テラスの隣の席は東洋人の女の子二人だ。

 席が満席で忙しいらしく僕と同い年くらいのベルギー人ウェイターは
呼んでも呼んでもわかったと言う顔はするがなかなか来てくれない。

まぁ混んでるから多少は仕方ないか、それだけ美味いのだろう。

隣の女の子二人組はムール貝とフリッツを食べていた。
話し言葉からすると韓国人だ。

 席に座って5分くらい経ったがまだウェイターは来ない。
こちらをチラチラ見てはいるが呼んでも来ないのだ。
 だんだんイライラしてきた、その様子を見ていた隣の韓国人の
女の子が見かねてウェイターを呼んでくれたがそれでも来ない。

 彼女達は韓国の大学生で卒業旅行で一ヶ月ヨーロッパを旅してる
そうだ、そのムール貝美味しい?と聞いてみた。
 彼女はグッドよと言ったので僕もそれにすることに決める。

席について10分くらいたっただろうか、ようやくウェイターがメニューを
もって来たので、ムール貝とフリッツのセットとビールを頼んだ。

しばらくするとビールが来る、今度は早かった。

ビールを飲みながら彼女達と話をする、お隣の国なのに共通の言語は
英語だ。
 彼女達は日本に興味深々、日本は今、韓国ブームであること、
ペ・ヨンジュンにオバサンたちが狂っていること、お互いの国のこと
食べ物のことなどいろいろ話した。

 一昔前までは韓国と言えば歴史問題もあり、日本憎しといった
イメージだったが日韓共催のワールドカップをきっかけにお互いの
距離が縮まって韓国の若者は今、日本に憧れや親近感を持って
くれているし僕らも韓国を身近に感じている。

   ワールドカップ予選の時、応援席掲げられた横断幕
  『一緒にフランスに行こう!!』にはとても感動させられた。

僕らの祖父の時代に何かあったって僕らの世代は仲良くすればいいじゃないか。

 中国も是非、見習って欲しい。

ビールを飲みほしたが、まだ料理は来ない、ウェイターにもう一杯
ビールを頼むとともに料理はまだかとクレームをつけた。

 あまりに待たせすぎだ。

 それから15分たったが料理はおろかビールのおかわりも来ない。

さすがにイライラしてきた、キレそうになった頃、料理が運ばれてきた
がビールはまだだ、まぁいい、料理を食べようとするとウェイターが
ビールも持たずに戻ってきて散々待たせた僕の料理をさげてしまった。

おい、どういうことだ!!とウェイターに詰め寄るとコレは間違いだった
他の客のだ、と言う。

 プッツンいきそうだったがまぁ待てと言うから我慢して席に座る。
女の子がその様子を見て、彼は不親切ねぇとなだめてくれる。

それから5分ほどしてやっとビールと料理が運ばれてくる。
初めて食べたムール貝、腹もたってたせいか、特別美味くも不味くも
ない。

ムカムカしているので2杯目のビールを早々に飲み干し、ムカつき
ながらウェイターにビールをオーダーする。

 彼女達は食事が済んだのだがウェイターが来ないので清算が
できない。
 彼女達は仕方ないわ、と言ってお店に自ら清算に行った。
ヨーロッパではテーブル会計が普通なので本来あり得ない行為だ。

予想はしていたが僕のオーダーしたビールは来ない。
何度も何度も言ったのにだ。

もう完全に頭に来た、よくよく見ていると他のヨーロッパ人の席には
無愛想ながらもちゃんと行くじゃないか。
 この理由は明らかだ、完全に東洋人をなめているのだ、
さっきの韓国人の女の子と僕のとこに対してはあきらかに
サービスがいい加減だ。

 おそらく東洋人のサルどもに使われるのはシャクなのだろう、
お前らは客じゃないとでも思っているのだ。

 完全に頭に来たので酒の勢いも手伝って奴のむなぐらに掴み
かかってやろうと思ったが4時間の滞在で喧嘩をしてもつまらない。
マスターのような男がいたのでそいつに文句を言ってやろうかとも
思ったがそれももうメンドクサイ。

 頭に来たので、料理の代金だけテーブルの上に置いて、ビール代も
サービス料も、消費税も、チップ(チップなんか誰がやるか!!)も
置かずに席をたち、そそくさと店を出てやった。

 もし追っかけてきたら突き飛ばしてやろうと思ったが追いかけては
来なかった。

あのウェイターのせいでベルギーの印象は最悪だ。

時刻は10時、僕は再びトラムに乗り南駅に戻った。


深夜の待合室

バックパッカー、出稼ぎから帰る若者、帰郷する学生、宿を持たない商人、さまざまな人が深夜の駅で夜行列車を待つ。

夜行列車の発車時刻は23時38分、発車まであと1時間とちょっとある。

 普通列車の運行は、全ておわり、残るは僕の乗る夜行だけだ。
深夜の駅構内は治安が多少不安だったが、警官が巡回していて
問題はない。

ロッカーからザックを取り出し待合室のベンチに座る。

列車の運行は一本を残し全て終わっているので駅構内、待合室に
いる人は僕と同じ列車に乗るのだろう。

 待合室には僕のようなザックを背負ったバックパッカー数人と、
韓国人の若者15人くらいの集団がいた。

 駅構内は人気もまばらで閑散としている。
待合室に居た白人の女の子に、この待合室は朝まで開いてるの?
と聞かれたのでわからない、と答える。

 彼女達は朝までここに居る気だろうか、ヨーロッパは日本と違って
あまり治安が良くない、特に深夜の駅周辺は危険ゾーンだ。
 終電が終わったあとの駅に女の子だけで朝まで居るのはあまり
オススメできないが、余計なお世話なので特に詮索するのはやめた。


発車まで10分、トイレを済ませプラットホームナンバーを確認する
と列車の中で飲むビールとスナック菓子を買い込んだ。


 プラットホームの下には乗車予定の乗客が集まってきていた。
僕のようなバックパッカー、出稼ぎから帰る若者、帰郷する学生、宿を持たない商人、さまざまな人が深夜の駅で夜行列車を待つ。

真夜中の国境越え

静まり返った深夜のホームにベルリン行きの夜行列車がすべり込んで来る。

真っ暗闇、深夜の静まり返った駅のホームにベルリン行きの夜行列車が
すべり込んできた。

ブリュッセル南駅での停車時間はおよそ一分だ、その間に自分の車両を
探し出さなければならない。列車が停止すると下りてきた車掌にチケットを
見せ自分の車両の位置を聞く。

 しまった、僕の車両は最後尾から2両目じゃないか、車両前方に
いた僕は重いザックを背負いながらホームを駆け出した。

長い列車の横を駆け抜けギリギリセーフで車両に駆け込む。

車両を間違うと、時に大変なことが起きる。

 ヨーロッパでは、同一列車でも行き先が違う車両が何種類も連結され
ており、国境近くの交通駅で勝手に違う列車に連結されてしまうのだ。
ニースに向かっていたいた人が、起きてみるとウィーンにいたなんて
事が実際に起きるのだ。

 この列車も、ベルリンに行く車両とハンブルグに行く車両が一つに
なってつながれていた。
 間違うとハンブルグ行きだ、まぁそれでもいいけど・・・。


 夜行列車は一石二鳥だ、その理由は、まず一泊分の宿代が浮くこと。

一日の出費の中で、宿代が占める割合は高い。その宿代が浮けば
その分、食費にまわしてリッチな旅ができる。

 2つ目は寝ている間に目的地に着くこと。

『世界の車窓から』なんて優雅な気分で窓の外を眺めていても10分
もすれば飽きてしまう。
 それ以降はただひたすら、列車が目的地に着くまで退屈な時間を過ごさな
ければならない。限られた旅の時間、これは非常に無駄に思える。

 その点、夜行列車なら窓の外の景色は期待できないが
寝ている間に列車が勝手に目的地に連れて行ってくれる。
 目が覚めればそこはもう目的地だ。

 まさに一粒で二度も三度もオイシイ効率的な移動手段が夜行列車だ。


 車両に乗り込み、自分のコンパートメント(小部屋)を探す。
今夜はクシェットと呼ばれる簡易寝台を確保しておいた。
日本のブルートレインのB寝台と思えばいい、ただし、3段ベッドで
敷居となるカーテンはない。

 僕の寝台があるコンパートメントの扉を開けようと
するとカギがかかっていて開かない。
 おかしいなと思ってガチャガチャやっていると隣のコンパート
メントのおじさんがどうした?とやって来た。

 僕のチケットを見せるが、やはりこの部屋で間違いない、
おじさんがコンパートメントの扉をノックする。

 するとカーテンが開いて、中からお婆さんが出てきた。

3段ベッドの一番下、二つにはそれぞれ、お婆さんが二人寝ていた。

 どうやら、パリを出発すると貸切だと勘違いしてカギを閉め寝て
しまっていたらしい。
 
おじさんに礼を言うと、一番上のベッドにザックを放り投げハシゴを
使って上にあがる。


 天井スペースの高さと防犯の点で一番上がベストなのだ。

 僕の枕はお婆さんが使ってしまってるようだが、まぁいい、少し高さと
硬さが気になるがザックを枕にして寝ることにした。
 寝ている間に荷物を取られない為にもそれがいい。


 列車が動き出し、寝支度をしていると韓国人の若者、男2人、女1人
がコンパートメントに入ってきた。
 彼らのベッドは残りの3つらしい、これでこの部屋は満室だ。


 大きな荷物を何個も持っているので上から手伝ってあげる。
荷物も収納し、彼らがベッドに入ったところで、車掌が検札に来た。

 検札を済ませビールの栓を抜く、韓国人の若者達もビールの栓を抜く。

 一番上のベッドの女の子が一緒に乾杯しましょ、と言ってきた。

寝ているお婆さんを起こさないように小さな声で4人乾杯する。

     「Cheers!!」

 アメリカ式の乾杯だ。
下の青年二人とも乾杯してビールを飲む。

 彼らが僕にチョコレートをくれた、僕も買っておいたポテトチップスを
彼らに差し出す。


 彼らはどうやら待合室にいた韓国人の学生で卒業旅行で
15人ほどの集団で一ヶ月、旅をしているらしい。

 しばらく会話をしていたが、缶ビールがなくなったので寝ることにする。
中段ベッドの青年は日記をつけている。

 レールの継ぎ目を越えるガタンガタンというリズミカルな音が
心地よく眠りに誘う。


 寝ている間に国境越え、目が覚めたらそこはドイツの首都ベルリンだ。






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