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ザグレブのユースホステル。
部屋で洗濯をしていると、一人の東洋人がクシャクシャして入ってきた。
「この国は日曜になるとどこの店も閉まってやがる!!水さえも手に入らねぇ!!
どこのスーパーもやってないから仕方なく近くのチャイナレストランに行ったんだが
たいして美味くも無いくせにチャーハン一杯50クーナもしやがって高すぎだ!!」
彼の名前はリー、28歳の韓国人で僕と同い年だ。
僕は腹が減っていたので軽く、彼の愚痴を聞いた後、お気に入りのリゾットが
美味しいレストランに夕食をとりに出かけ(ザグレブではここのリゾットしか食べて
ない。4回は食べたな・・・。)帰りに開いてる商店を見つけたのでそこでリー
の分の水とビールを買って帰って来てやった。
部屋に戻ってリーに水を渡すとエラく驚いていた。
どこに売ってたんだ?と・・・。
まぁいいから飲めよ、とビールを差し出し二人で酒盛りを始める。
遠い異国で隣国同士、歳も同じなので彼とはすぐ打ち解けることが出来た。
どうして旅をしてるんだい?
彼は言った。
「オレは韓国の大邱(テグ)って町から来たんだ。職業は住宅の設計、だけど
違うんだオレが本当にやりたかったのはもっとクリエイティブな仕事。悩んだけど
辞めてきた、韓国のオトコの30歳ってのは大変なんだ、仕事に結婚に、社会的
にもいろいろと責任が大きい一つの区切りなんだ。だから今、30になる前に色ん
なことを経験しておきたい、好きなことを何かやっておきたい、そう思って旅に出た
んだ」
韓国の社会はどこか日本と似ている。
そいつは日本だって同じさ、30になってこんなことやってたら俺も日本じゃ白い目
で見られるよ・・・(27でも非難されるけど・・・)、少なからず自分の置かれた状況
ととても近くて僕は彼にとても親近感を抱いた。
買ってきたビールもきれた頃、リーが言った、酒を買いに行こう。
僕らは二人、酒を求めて駅のキオスクまで出かけた。
この瞬間、この国で東洋人二人の組み合わせが町を歩いてるなんて僕ら二人
だけだろう・・・そんなことを考えるとなんだか可笑しかった。
キオスクに着くとリーはウィスキーを2本と買い、僕が金を払おうとしたが
いらないと言った。
宿に戻り二人、ウィスキーを飲みながら色々と語った。
彼は少し照れくさそうにザックから何か小物を取り出した。
それはイヤリングだった。
「コレ、韓国にいる彼女に・・・いや、まだ彼女じゃない・・・好きな人に渡そうと
思ってるんだけど、どうかな・・・?」
それは彼らしくとても無骨なイヤリングで、すこし女の子の好みとはずれている気
がしたが、それはそれで彼らしくていいだろうと思った。
「いいんじゃないか?喜ぶよ、彼女」
そっか、良かった・・・そう言いながらリーはとても照れていた。
たった一晩で、出会ってから数時間で、こんなにも解り合える。
日本人と韓国人はこんなにも解り合えるんだ、今、この瞬間、日韓のすれ違い
なんて僕らには関係がなかった。
こんなにも祖国から離れた異国の地で、同じアジア人二人、こんなにも解り合える
じゃないか、クロアチアから見たら日本も韓国もすぐ近く、どっちも同じ様なもの、
兄弟みたいなもんじゃないか、そう思った。
彼も同じことを思ったらしく、
「そうだ、お前に渡したいものがある、日韓友情の証だ」そう言って彼はおもむろ
にザックをまさぐり始めた。そして手渡されたもの・・・。
PLAYBOY10月号・・・。
エロ本かい!!


リーと話していたとき、ふと疑問に思ったことがあったので聞いてみた。
日本人旅行者は・・・いや、僕は、中高年層に比べ、食生活がだいぶ欧米化して
きたとは言えやはり日本食が恋しい。
特に一ヶ月も旅をしていると、無性に醤油が恋しくなる。
日本で生活していると普段そんなに醤油を口にしたりしないのだが(一人暮らし
の独身男性の場合ね。)不思議なものだ。
たぶん醤油ってのは和食の味の象徴たるもんなんだろうね。
さて同じアジア人、韓国人のリー、果たして彼も似たような悩みを持つので
あろうか?
韓国人の醤油、沢庵に相当するメジャーな味と言えばコレだ、皆さんご存知
キムチ
彼に聞いてみた・・・キムチが食いたいかと・・・。
すると、思ったとおりの食いつき。
リー「く・・・食いてぇ〜・・・」
彼は旅に出てすでに一ヶ月、これからあと一ヶ月残されている。
そ〜かそ〜か、食いたいか、キムチ。
んじゃコレはどうだ?
「ナムル、ビビンパ、クッパ、トッポギ、サムゲタン、チヂミ、カルビ・・・」
僕は思いつくままの韓国料理の名を挙げてみた。
するとリー、頭を抱えながら・・・
ヤメテクレ〜食い物の話はしないでくれぇ〜〜〜〜・・・・!!
思った以上の食いつき、コリャ面白いわ、やはりこの問題はアジア人共通の
悩みだったのね・・・。
言ってた自分も米が恋しくなった・・・諸刃の剣・・・。
ウォ〜〜〜卵かけご飯食いてぇ〜〜〜〜・・・・!!


リーと出会った晩、お気にのリゾットを食べに行った帰りの商店でのこと。
こぢんまりとした店内に僕が入ったとき、僕に注がれる店員の目は何か
怪しいものでも見るかのようだった。
無理も無い、東洋人などほとんど見る事も無いこの国で、得体の知れない
日本人が夜、一人で入ってきたのだ。
しかし僕個人としては特にやましいことも何も無いので、早々にビールと
つまみと水を買っておさらばすべくアルコールの陳列してある冷蔵庫の前まで
来た。
そこにはヒップホッパーっぽい、いかにも白人の悪ガキという二人が居た。
そしてあろうことか僕の目の前で堂々と笑いながらコーラやらジュースを服の下
に詰め込みだした・・・。
つまり万引きをしていたのだ・・・。
どこの国にも悪ガキはいるものだな・・・と妙に感心すると共に、注意しても
無駄、ほっとけと一瞬思った・・・が、ここでおせっかいな正義感を発揮し店員に
こいつ等パクってるぞとジェスチャーを送る。
すると、さっきまで僕を警戒していた店員の視線が今度はその若者二人に向け
られ腹部の膨れを確認した店員は若者に近づき、服の下のモノを出せと迫った。
さぁ〜てどうなるか、密着!カメラは見た!!万引きGメンの365日!!的な
ドキュメンタリーを思い出して、ワクワク。
店員に迫られたクロアチアンエミネムな若者二人、悪びれる様子もなく、腹に
入れてレジにもってこうと思っただけさ、みたいなことを言うではないか。
そしてレジに行った途端、やっぱ金無いから返すわ、アハハ〜。
みないな感じで笑いながら出て行った・・・( ゚Д゚)ポカーン・・・。
それだけかよ〜、なんともあっけない結末だが現実問題、万引きによる被害
は避けられたのである。
さっきまで得体の知れない東洋人を見る目だった店員の目は、感謝の目に変わ
っていた。
こりゃ、もしかしてもしかするとビール代浮くかも・・・なんて期待してレジに並ん
だのだが、それとこれとは話は別、料金はちゃっかり請求されましたとさ・・・しかも
持ち合わせが足りなくて、レジにてポテチ一品返却・・・。
カッコわる・・・。
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